良い開発環境の作り方
著者: 多田 航私はプログラマです。しかし、プログラマだけでは良いゲームを作ることはできません。アーティストが必要です。面白さを考えるゲームデザイナーが必要です。他にも多くの才能が必要です。そういった才能をゲームに落とし込むためには良い開発環境が必要です。
開発環境はプログラマ以外の人も使います。プログラマ以外の人にとっては開発環境こそがゲーム開発に関わる手段なのです。早くゲーム開発を始めるため、開発環境は短時間で構築する必要があります。開発環境は、プロジェクトメンバーの並列作業を意識して作られなければなりません。開発環境はゲームが完成するまで維持し続けなければなりません。これは複雑な仕事です。
開発環境として何が必要かは、利用者に直接聞いて把握します。利用者と直接会話をすると、相手の表情や行動からも要求を汲み取ることが出来ます。
利用者がどの程度コンピュータに長けているかを調べる必要もあります。マウスの動きやキーボードの打ち方を見ることで、どの程度コンピュータが扱えるかが把握できます。利用者がコンピュータに長けていれば、一般的なツールを多用して短時間で開発環境を提供できます。が、そうではない場合や、適当なツールが世の中に無い場合は、ツールをプログラマが作成する必要があります。
良いGUIツールがプロジェクトチームの作業効率を高める場合に備え、GUIデザインの勉強をする必要もあります。利用者にGUIの作り方を教えてもらう方法もあります。ゲームを動かして確認する手段も重要です。実際のゲーム機を使い、製品と同じ状態で確認する方法と、高性能なPCを使ってゲームを動かし、短時間で確認する方法があります。このシステムでは、利用者が自分で各種パラメータをゲームへ反映できる様にします。プログラマを介さないことで、プロジェクト全体の効率を上げるためです。
また、開発環境は極力自動化します。これにより人間の操作ミスを減らし、人間はゲームを面白くすることに時間を割くことが出来ます。
ゲームの開発が進むにつれて、開発環境に求められる役割も変化します。開発初期は、とにかくゲームを動かすことが求められますが、開発後期はゲームを安定動作させることが求められます。また、利用者の様子や、寄せられる要望に対応し、開発環境を常に改善し続ける必要があります。コントローラーの操作、腕の動き、マウスクリック回数まで細かく観察します。これで開発環境の操作時間が分かります。
忙しい時でも利用者から話しかけられたら喜んで対応します。話しかけられるということは、メンバーから信頼されている証拠です。ツールにバグがあれば即座に対応します。そのツールのバグがメンバーの時間を奪っているかもしれないのです。良い開発環境はプロジェクトメンバーの試行錯誤回数を増やすことが出来ます。試行錯誤が多いほどゲームは良くなっていきます。
開発環境の構築は苦労の連続ですが、プロジェクトの方向性に影響します。慎重なエラーチェックをする開発環境なら慎重なプロジェクトになり、誰でも気楽にゲームを変えられるようになれば気楽なプロジェクトになります。要求を実装して相手が笑顔になれば、それは良い開発環境です。うまく要望を叶えることで、この人たちのモチベーションを上げることが出来ます。それが開発環境担当の面白さでもあります。
無事にゲームが完成したら、次の開発環境を考えます。実現できなかった要望や、人為的ミスが多発した箇所を洗い出し、対応策を考えておきます。常に技術情報を収集して開発環境への応用方法を蓄積しておきます。もっと良い環境を提供することで、もっと良いゲームが作れるようになるはずです。