楽しいと思った事象を構造化し、パターン認識で捉えること

私が真剣にコンピュータという道具と関わりだしたのは、20代も半ばを過ぎてからである。転職した先がゲーム会社だったことがきっかけだ。それまで、なんとなく畏敬の念を抱いていたコンピュータというもののしくみを知って驚いた。(プログラマの人にとっては当たり前なのだろうが)コンピュータは、順次、反復、分岐というたった3通りの方法でしか物事を処理できないおバカさんだったのだ。言い換えると、現実よりリアルなCGも、人間世界を構成する複雑なルールを記述するときも、コンピュータはこの3通りの方法で行っているに過ぎない、ということだ。さて、ゲームの話。ゲームをつくる、とはなにか。

様々な定義が可能であるが、私の定義は、

  1. ある世界を構築すること
  2. その世界においてプレイヤーが達成すべき目的をつくること
  3. その目的達成の過程において遵守すべきルールを設定すること

である。例をあげると、

  1. CGを使って美しい剣と魔法のファンタジーの世界を作り出して
  2. プレイヤーは一定時間内にとらわれた姫を助けなければいけない
  3. 救出過程で敵に見つかったらアウト

というのがゲームだ。そうやって作ったゲームを遊ぶ人が面白いと思えば、その人は優れたゲームクリエイターだ。

そして、ゲームを作るということは世界の構築と目的とルールの設定を行うということだ。コンピュータというおバカさんを使うのだから、シンプルなパターンで記述できなければならない。既存の面白いとされているゲームは、少し考えれば、驚くほどシンプルなルールで構築されていることに気づくと思う。探検ごっこをしていて、知らない場所を発見した楽しさを再現したのがドラゴンクエストだろうし、かくれんぼの面白さを再現したのがメタルギアソリッドだろう。優れたゲームクリエイターは、生きてきた中で楽しいと感じた体験をシンプルに構造化し、パターン認識で捉えることに秀でた人だと思う。

自分が楽しいと思った瞬間、それは旅行でも買い物でもサッカー観戦でもいい。その理由を考えてシンプルに構造化できればゲームは作れる。例えば、アジアの町並みは、ごちゃごちゃ猥雑で、ヨーロッパの町並みは広場を中心に整然としている。その理由がパターンで記述できれば、優れた都市育成シミュレーションゲームがつくれるだろう。なぜ人々はブランドのついた服やカバンに高いお金を払うのか。それがわかれば、きっと面白いアバターサービスを作り出すことができるだろう。FCバルセロナはなぜ強いのか。そしてそのサッカーはなぜ美しいと感じるのか。その答えが解れば、あたらしいサッカーゲームがつくれる、かもしれない。

ゲームクリエイターになるような人は、多くの場合、ゲームを心から好きで、生きてきて楽しいと思った瞬間は、既存のゲームを遊んでいたときに違いない。しかし、既存のゲームを構造化すれば、既存のゲームのパターンになる。グラフィックだけ進化して同じようなゲームが再生産されているのが、いまの時代だ。ゲームクリエイターとして、いままでにない新しいゲームを作り出したいとしたら、他のゲームクリエイターがしないであろう、生きていて楽しい瞬間を見つけ出すこと、そして、それを構造化してシンプルなパターンに落とし込むことが近道かもしれない(と思って、私は日々いろんな遊びに手を出しております)。

死ぬまでにそんな、芯を捉えた斬新なゲームをひとつでも多く世に問いたい。すごいヒット作を生み出したい。

というわけで、日々がんばります。みなさんもがんばってくださいね。