VCと付き合う

ゲームクリエーターが発展して、いつの間にか会社経営していた、ということはよくあります。

その場合、自己資金で少ない人数で細々と、自由にやっていくつもり、という方も多いでしょう。チームの実力と企画力については自信があるのではないでしょうか。もし、資金があれば、今温めている企画を旬なうちに発売することができるとします。そこでVC(ベンチャーキャピタル)による資金調達を検討してみましょう。

VCには大小いろいろあります。様々な対象に幅広く出資するところも、業界を絞って出資するところもあります(後者のように専門性があるVCは有力な情報源にもなってくれるし仕事も持ってきてくれます)。ところで彼らは融資のように利息で儲けるわけではありませんが、失敗しても返済を求めることができないというリスクを抱えています。なので、VCも経営チームとして参画することを望むことが多いです。その時の権力は出資比率による、ということはご存知ですよね。51%以上は取られるな!というやつです。では何パーセントになるのでしょうか。それを協議するのがデューデリジェンスという儀式です。

VCも「そんなには取らない、社長に自由にやってもらいたい」と言ってくれます。しかし、VCは投資ですから、いつか回収して利益をあげることを目的としています。例えば出資先を5年以内に上場させる、などの基準があります。それまでに、市場性のあるプロダクトをいくつも発売し成長していけるかどうかがポイントです。

さて、資金が得られる前提で新作の計画を見直しましょう。より拡大できるわけです。新しく人材採用を何人行うのか、新しい仕様やグラフィックスを追加する工数と予算は?発売日を伸ばしても、まだ市場性があるのかも注意せねばなりません。

それらを計画して必要な資金額を計算し、事業計画として提案します。すると、VCはまず「バリュエーション(時価総額)」の算定から入ります。あなたの自己資金1千万円で立ち上げた資本金1千万円の会社が、既に魅力的なヒット作に着手出来ているので「はい、バリュエーション1億円」などと見積もられます。すでに10倍です!そしてデューデリジェンスは「5千万円出資するからこちら持分33.3%で。ポスト時価総額1億5千万円ね」となり、晴れて合意となりました。この出資額、それぞれの保有株式数、時価総額のやりとり計画を資本政策といいます。

さて、その資金で会社を急拡大し、タイトルは大作としてデビューできそうです!しかし、開発が遅れると大変です。やがて資金が尽き、VCに助けを求めます。そのプロダクトはまだ市場性があるのでしたっけ、などと問われます。今度は弱い立場。「バリュエーションは1億2千万円で。3千万円出資するからこちら持分46.7%ね」となり、支配権がピンチとなっていきます。

やがてVCは、あなたの会社の上場をあきらめ、売却での回収(EXIT)を検討します。開発ラインが欲しいB社に持ち株を売却しようとします。B社からの提案が「バリュエーションは1億5千万円で、主にVCさんから51%買収」となり、VCは投資金額を全額回収できずに苦い顔。B社社長からは「一緒に大作を作っていこう」と言われますが、果たしてこれで良かったのでしょうか……?

もっとも、最初の出資も無く自己資本で細々とやっていれば、この時期に大作を作るチャンスも無かったはず。

業界の変化は激しいです。資本政策をしっかり立て出資を受けながらの経営、という選択も、あなたのプロダクトを早く立ち上げるためには一つの手段となるでしょう。

(図表は本を参照のこと)