GDCの歩き方
著者: 林 洋人GDC(GameDevelopersConference)をご存じでしょうか?これは毎年サンフランシスコで開催されている世界最大のゲームクリエーター国際会議です。国際会議といっても堅苦しいものではなく、日本を含む世界中の国から2万人近くも集まる巨大なお祭りのような雰囲気を持っています。ゲームクリエーターには絶対に外せないイベントです。
GDCではプラットフォームベンダーの重大発表や、世界的超大作のメイキングも見られますが、他にも何百という講演があり、あらゆる視点からゲームの事が語り尽されます。自分が作ったゲームに投入された新技術が惜しみなく公開され、これからのゲームビジネスが語られ、新しいゲームのアイディアやツールを売り込む活動も盛んに行なわれます。
異文化を肌で感じられることもGDCのいいところです。開催地がアメリカですから、そこで流行っている表現や技術が目立ちます。アメリカ人は首の太い屈強な男の筋肉の表現にとことんこだわり、ひきちぎられた肉塊や、飛び散る血しぶきの表現に最新技術を次々投入してきます。世界に出ていけるゲームを作ろうとする場合は、この温度には触れておいたほうがいいでしょう。
講演以外にもイベントが盛りだくさんです。この1年間で最も素晴らしかったゲームが大観衆の前で表彰され、立派な業績で業界に貢献した偉人が讃えられ、これからの新進気鋭のスタジオにも賞が贈られる“GameDevelopersChoiceAwards”も見逃せません。メイン会場だけではなく、周囲のホテルのスイートルームでは、個別の商談や技術のプレゼンテーションも行われます。夜になると、会場周辺のバーやレストランはGDCに参加しているゲームクリエーターやプラットフォームベンダー、ツール・ミドルウェアベンダーのコアメンバーで溢れかえります。営業のための東京ゲームショウやE3と違って、GDCは作り手側が主役のイベントです。
そして、GDCではゲームクリエーター達は非常な尊敬を受けています。ゲームクリエーターは、一番好きなことをそのまま職業にすることができた成功者として憧れの存在であり、プロとしての実力に見合った誇りをちゃんと持っています。その晴れの舞台がGDCです。ゲームといえば日本が世界を引っ張っていった時代が長かったため、日本人は歴史的な位置づけでいまでも一定の尊敬を受けています。わたしたちもそれにふさわしい仕事をして、もっといいゲームを作りたいという気持ちになります。最近は日本人による講演も増えています。日本では決して見ることができない、海外の人達の反応を生で感じるのも面白い体験になります。
こういった「熱気」を感じるためにも、ぜひGDC現地に足を運んでみてください。どんな情報でもインターネットで簡単に手に入るこの時代にこそ「ライブ」の価値が高くなっています。ついでに、世界のゲームビジネスと技術のトレンドもお土産として持って帰りましょう。
英語が心配でしょうか?ゲームの用語や技術の用語はもともとほとんどが英語です。何について話しているかが分かれば発音や文法はあまり関係ありません。そもそも、世界中から集まる参加者は、みんな強いお国訛りで話しています。ゲームという共通のテーマがあるため、後は言いたいことを言おうとする姿勢さえあればなんとかなります。イベントの高揚感でテンションが上がれば、自然に恥ずかしさも吹き飛びます。英語ができるようになってからGDCへ。ではなく、とりあえず参加してみることで、英語の学習に対するモチベーションが上がるという効果もあります。
日本で毎年秋に開催されているCEDECというゲームクリエーターイベントも重要ですが、併せて、GDCにもぜひ参加しましょう!