開発機材との付き合い方

僕はこれまで何本ものゲーム開発にかかわって来ましたが、自分のことを「クリエータ」だとは思っていません。僕は「ゲームビルダー」だと思っています。0から1を生み出すことが大変なのはよく知っています。しかし、1から結果までを紡ぐ過程も大いなる努力が必要なのです。そしてこの過程の多くには紙と鉛筆以外の開発機材との戦いも含まれます。

多くの開発機材は万人が多少乱暴に扱っても壊れないという家電の様な発想では作られていません。プロが使う機材は、使い手にもスキルや気配りを求めます。あなたがどんな待遇で機材を預かっているか、どんな環境で使っているかはわかりません。でも、ここで紹介するいくつかのコツを知っていることによって、あなたの大切なクリエイティブな時間を失うことを少しでも少なくすることができるでしょう。

不安定電源に注意しよう

特にオフィスビルなどでは、急に多くの人が電気を使うと商用電源の電圧が下がります。すると突然開発機材が止まったり、不具合が発生することはよくあります。この不具合の原因をソフトウェアだと思いこんで調べていくといつまでたっても現象が再現しないという事態になり、貴重な時間を費やしていってしまいます。もったいない。

停電と通電回復には気をつけろ

突然の停電もあれば計画停電もあります。ビルの定期点検等による停電もあるでしょう。電気が切れる時、データを失う危険性があるのは皆さんご存知のこと。が、しかし、電気が入る時の事を意識したことはあるでしょうか?停電後の通電……つまり、急な電気の一斉回復があったときに、ある特定の場所に電気が集中して流れることがあります。これをサージと言います。その特定の場所があなたのPCかもしれません。大切な開発機材かもしれません。この時に、電源を破損することがあります。電源スイッチを入れても動かない、本体は動いているのに全体として何かがおかしい……。大抵の場合は修理ということになると思います。開発機器の様な特別なものは、すぐに代わりが手に入る訳ではないので、失う時間が多すぎることもあるでしょう。このような事態を避けるためには、業務終了時は習慣的にコンセントを抜くように心がけましょう。この時、ちゃんとプラグを持って抜いてくださいね。

UPSのメリット

これには、もう一つ対策方法があります。それはサージに強いUPS(無停電電源)を使うことです。急な停電にも対応できる可能性を高めてくれます。商用電源の電圧変動も吸収してくれます。いいこと尽くしです。ただし、数年に一回はバッテリーを交換しなければならないことも覚えておいて下さい。

ソフトウェアの不具合だけとは限らない

不具合、要するにバグの多くはソフトウェアによって引き起こされます。特に再現性が高いものはまずそうでしょう。しかし、そうではないものもあります。よくあるケースとしては先に述べた電源電圧変動によるもの。その他には光メディアの熱膨張による読み取り失敗による不具合など。こういったものは事象を良く観察すれば原因と思われる箇所にたどり着くことができます。しかし、そうではないものがあります。その一つがソフトエラーです。名前に“ソフト”と入っていますが、原因は宇宙からやってくる中性子等です。中性子がメモリセルにぶつかることによってメモリの内容が破壊され不具合につながります。これは開発中にというよりもオンラインゲーム等で常時稼働し続けるサーバ等で体験することになるかもしれません。相手が中性子だけに逃げ場が無いのですが、強いてあげれば地下のデータセンターを使い、こまめに再起動しましょう。

開発機材もゲーム開発の大切なパートナーですから、その特徴や癖を良く知り大切に扱いましょう。静電気でバチッときたときに痛さよりも機材の故障を先に心配できるようになれれば一人前です。