自分自身のベクトルを合わす
著者: 藤村 幹雄これまで人材育成という分野で多くの方と接してきました。過去にはゲームクリエイターになりたい学生への教育や、最前線で活躍をされている方へのセミナー提供などを行い、現在は人事に在籍し技術研修などの支援を行っております。このような立場からお伝えしたいのは、「皆さんは、置かれている状況に自分自身のベクトルを合わすことができるのか?」ということです。
これはゲームクリエイターに限った話ではないのかもしれません。特に、ここ最近の大きな変化に直面するゲーム業界では必要な意識と感じております。ゲームクリエイターには知識や技術、創造性やコミュニケーション能力など、様々なものが必要となります。しかし「自分自身のベクトルを合わす」ことは、それ以前に根本となる大切な考えだと思っています。私自身、この業界に入りたての頃に言われた言葉で、その当時はまだ未熟だったので言葉では理解できても、実体験としては理解できませんでした。今でも置かれている立場や状況、自分のキャリアを考える上で、自分自身に問いかける言葉でもあります。
業界でキャリアを積んでいく中で、個人の能力や年齢が原因となる場合や、市場の変化など様々な要因で自分のキャリアを見直す機会が訪れます。ゲームビジネスの現場では、技術の進化とともに様々なジャンルが確立され、現在ではソーシャルコンテンツがビジネスの主流となっています。このように主な市場が移り変わる中、ゲームクリエイターとしての存在意義を再確認しようとされた方も大勢いると思います。その流れにいち早く気が付きご自身のベクトルを合わせた方、また出遅れたにしろベクトルを合わす事ができた方、残念ながらベクトルを合わせる事ができずに別の分野で頑張っている方、様々あるとは思います。特に、会社や組織に属しているゲームクリエイターの場合は、個人の意志に関わらず会社や組織から変化を求められる場面も多いと思います。当然、会社に所属していれば望んだ仕事もあれば、望まない仕事もあります。各個人の人生観や価値観によって正解は1つではありません。何も会社の方向性や指示に従う事だけが正しいという訳ではありませんので、そこは各個人がしっかりと考え出した答えならば、今と違う新たな道で頑張ればいいと考えています。ですが、その選択肢を採らなかった場合は、会社や組織の方向性に自分自身のベクトルを合わす必要性があります。誰もがゲームクリエイターになれる訳ではありません。求められているスキルをお持ちでも、ご自身のベクトルを合わす事ができず道を変えられる方を多く見て残念に思う事もありました。またこの変化を転機にする方も見てきました。是非、ご自身のベクトルはどうなんだろう?と振り返り、目指す方向にベクトルを合わせてみてください。
これからゲーム業界を目指す方は、目標や目的意識を持って業界へ入られると思います。ですが、「学べる事・学べない事」があるのは意識しておいてください。例えば知識や技術は大学や専門学校などの教育機関で学ぶ事ができるかもしれませんが、「経験からしか得る事ができない」ことで教育機関では学ぶ事ができないものも多くあります。これはキャリアを積みながら経験する事なので、実際にご自身で経験をしながら想像と現実の違いを感じたら、「自分自身のベクトルを合わす」という事を心の片隅にでも覚えておいていただければと思います。
これからも変化する市場の中でご自身のベクトルを合わせていただき、新たなエンターテインメントを世の中に提供していただくのを楽しみにしております。