手放せば、楽になりますよ
著者: 日比野 則彦人は誰でも「こうしたい」「こうなりたい」という夢を持ちますよね。それは素晴らしいことだと思います。生きるエネルギーを与えてくれます。でも、世の中とは不思議なもので、夢を実現しようとすればする程、壁にぶつかります。時には、自分の頑張る力も尽き果て、生きる意味を失いそうになることもあるでしょう。
人生のライフゲージは例外なくいつか“GameOver”になります。ゲームをプレイすればお分かりの通り、ゲージが残り少なければ、どんなに焦って頑張ろうとも、どんなに技術があろうとも、遅かれ早かれTheEndを迎えてしまいます。
そうならないためには、
- 何回も練習する
- 早めに手を打つ
- 人に聞くのが必要だと思いますが、残念ながら人生はRetryができません。実は別の選択肢があるのをご存知ですか?
- ポーズする
- ゲームをやめて別のことをする
実は、「ゲームをやる」という行為自体が、自分自身の選択だったことに気づくとき、まったく新しい世界が見えてきます。
私は2005年から音楽制作会社を経営しています。ゲーム会社に雇われていた安泰な身分から、急に明日も分からぬ状態になって、最初の数年は「仕事を取らなければいけない」という焦りが常にありました。営業、制作、業界の分析、人脈作り……できるだけのことをしました。
しかし、結果として私が目にした現実は、忙しくて心配りの出来ない私に対して、つらい思いを抱えて去って行った従業員、友人達。稼いだ分と同じだけ(もしくはそれ以上に)、不思議なくらいに出て行く諸経費。何よりも、家庭の崩壊。
何度となく、孤立無援の「どん底」に放り出された経験をしました。
もっと早くに、「ポーズ」をするべきでした。でも、泥沼にはまればはまる程、止まれなかったのです。
これ以上何も失うものが無くなる、というところまで追いつめられて、ようやく、気が付きました。そもそも、ゲームに遊ばれていたことに。
それ以来、私は自分の会社でいわゆる「売上予測」というのを立てるのを止めにしました。営業も止めました。そのかわり、一つ一つの仕事を、より大事にするようになりました。
家庭、従業員、仕事で関わるお一人お一人を、大事に思って、その賜物に水を注いで、開花させること。それだけを考えて、今は仕事をしています。
そうすれば、私がゲームから離れるときも、私よりもずっと良い仕事をして下さる方が、たくさんいるということになります。
そんな風に考えるようになってから、自分が努力をしないで備えられているものが、実にたくさんあることに気がつきました。水、美しい自然、美味しい食物……それだけでなく、喜びや幸せ、さらには自分が想像もしないところに辿りつける、極上のルートマップまで。
与えられるものに満足すること。委ねて、手放すこと。
どんな嵐が来ても、どんな状況になっても、いつも喜んでいられる人を、打ちのめすことができる敵はどこにもいません。
そうやって一日一日を歩んで行くだけで、素晴らしいエンディングとエンドクレジットを楽しめるのではないかと思っています。