ピグライフをつくるときに考えたこと
著者: 浦野 大輔業界では「ソーシャルゲーム」と呼ばれる分野の「ゲーム」は、そのユーザー層を大きく拡げました。その拡がりは「ソーシャルゲーム」を遊んだ事の無い方にも「ゲーム」を遊んで頂けるところにまで達しています。そのような方にお楽しみ頂けるような「ゲーム」をつくるためには、従来の「ゲーム」や「ソーシャルゲーム」をつくるときにはあまり気にしなかった部分にも気を配る必要があります。
ここでは、当社サイバーエージェントの仮想空間アバターコミュニティサービス「アメーバピグ」の中に登場した、お庭づくりをテーマにしたソーシャルゲーム「ピグライフ」を例に説明します。ピグライフは、アメーバピグで初めての大型ソーシャルゲームとしてスタートした企画です。ターゲットユーザーはアメーバピグの全てのユーザー(女性や普段あまりゲームを遊ばないような方も多い)を想定しました。なので、大事にしたことは、これまでソーシャルゲームを遊んだことがない方がいかに楽しめるか、という点です。これを要素に分解すると「ゲームと呼ばない」「ユーザーの興味を取り入れる」「簡単な操作」になります。
まず「ゲームと呼ばない」からです。ピグライフでは、宣伝コピーを「自分だけの素敵な庭を作ろう!」とし、これをゲーム(ソーシャルゲーム)と呼ぶことを避けました。アメーバピグのユーザーの方々は「ゲーム」と聞いただけで「何か難しそう」というようなネガティブな印象を持たれる方も多くいます。過去にも「アバター」というゲーム用語を避け「自分そっくりキャラ」としたことが受け入れられた事例もありました。その結果、ピグライフでは、ゲームと意識せずに遊んで頂ける、新しいユーザーの開拓に成功しました。
次に「ユーザーの興味を取り入れる」です。ピグライフのモチーフは、その主ユーザー層である女性が自然に入り込める+憧れ要素のあるものとして「英国庭園」を選定しました。企画段階では「戦国」や「アイドル」など様々な候補がありましたが、誰もが理解できる日常的なもの、ゲームの目的がすぐに理解できる(ピグライフ=庭づくりのゲーム)、アメーバピグのユーザーが違和感なく始められる(アメーバピグ:お部屋、ピグライフ:お庭)、という観点からこのモチーフにしました。他にも、ティーパーティー、料理、裁縫、手芸、動物など多くの要素を盛り込み、現在、女性ユーザーを中心に400万人以上の利用者を抱えるサービスに成長しました。普段全くゲームを遊ばないような制作陣の母親達も夢中になってくれて、驚きましたし嬉しかったです。
最後に「簡単な操作」です。ピグライフでは、マウスのクリックだけでゲームを進められるシンプルな操作性を貫きました。作物など操作の対象となるオブジェクトをクリックするだけで、その状況(主に成長状態)に応じた適切なコマンドが実行されるようにしたのです。例えば、成長途中の作物であれば「水やり」が、成長しきった作物であれば「収穫」が自動で実行されます。コマンド実行までのステップ数が減り、より簡単なゲームに感じられます。ただしこの仕様では、例えば、成長しきった作物に「収穫」ではなく「水やり」をしたいというユーザーの要望には応えられません。これはトレードオフでしたが、ピグライフというゲーム初心者向けのサービスでは良い判断だったと思います。
私はこれまで、アメーバピグ(仮想空間)、ピグライフ(ソーシャルゲーム)と、これまでそのジャンルを遊んだことがない人に向けて、その人にとって初めての体験になるようなものを目指して、サービスづくりをしてきました。今後はスマートフォンという環境で「スマホユーザーに、新しい体験を」を目標に、更に新しいサービスづくりをし続けていきたいと思います。