ゲーム開発はチームワーク

ゲーム開発というのは「おもしろい」をキーワードに多くの人数と時間をかけて制作される非常に特殊な現場だと思います。

なぜ特殊かと言うと、企画コンセプトである「おもしろい」ことも人によってはおもしろくないことかもしれませんし、タイミングによっては古いものになってしまう可能性もあります。その「おもしろい」を多くの人たちと共有しながら、場合によっては2~3年という膨大な期間をかけて制作されるからです。

そういった開発現場で最も重要なことは“共有”することだと思っています。

たとえば私は、現場で起こっている問題について、会議室でのミーティングをほとんど行いません。理由は、出来る限りチームの真ん中で話をすることで、当事者以外のスタッフにもチームで起こっていることを感覚的に肌で感じてもらうことが大事だからです。

何が問題で、解決するためにはどうすればいいのか?本当にそれが問題なのかということを日々チーム内でコミュニケーションを取っていれば、個々がどういう考えを持った人間なのかということも理解できるので、スピーディに連携を取り問題を解決することができると考えています。

また、私は自分1人が考えられることなど大したことはないと思っています。それは、風通しが良くモノ作りに集中できる環境に身を置いていたということも大きいですが、面白さの種をみんなで育てることで予想外の面白さが現場で生まれる瞬間を何度も見てきているからです。

最近の出来事で言うと、ゲーム内のとあるパートがなかなか面白くなりませんでした。その部分に関わる主要スタッフの間には重い空気が流れ始め、思考が減点方式になってしまったり、要素を追加することで大事な部分から目を逸らそうとしてしまう状態になっていたのです。

そこで、私は主要スタッフと一緒にそのパートを見ながら、再度やりたいこと=コンセプトの話をしました。すると、1人のスタッフがこれまでとは違った視点からの提案をしてくれたのです。その提案が非常にユニークだったこともあり、すぐに実験をしてみたところ、コンセプトを変えることなく、みんなが笑えるパートに変化しました。“みんなが笑える=楽しめるものになっている”、これが重要なのです。ここまでくれば、後は素材を殺さずにまとめる方向に進めばいいのですから。

このように、色々な価値観や視点を持った人間が開発チーム内にはいます。そして、それぞれがユーザーであり、何か面白いことをやってやろうと考えているゲームクリエイターなのです。商品に対して厳しい人間たちが真剣に向き合うからこそ、開発現場ではこういった化学反応が起こるのだと私は思っています。

最後に、タイトルにも挙げたとおりゲーム開発はチームワークです。開発現場というのは生き物のような場所であり、良くも悪くもその環境は人によって育ち変化します。個々が「仕事だからある程度やこの程度で……」と割り切った考えが過ぎたり、「誰かがやってくれるだろう」などと人任せな態度でいて、現場の温度=商品クオリティが上がるようなものではありません。

企画コンセプトを元に、どうすればもっと面白くなるのか、ユーザーを驚かせるためにはどうすればいいのかということを常に意識共有し、チーム全体が「これならいける!」という熱量があれば、そのタイトルはどこか“ウリ”のあるゲームになっているのではないでしょうか?