ゲーム制作者にとって大事なもの
著者: 鈴木 健夫私はアニメーター、テクニカルアーティスト、リードテクニカルアーティスト、リードデザイナーと、その時々で担当が変わってきました。それぞれの時代の中でゲーム制作者にとって大事だと感じたものを紹介していきたいと思います。
3Dアニメーター時代:
ゲームをする事は勿論、絵やCGをつくる事が好きでこの業界に入ってくる人は多いと思います。自分もそうでした。駆け出しのときに一番意識した事は、いいアニメーションをつくるために「センスを磨く事」、そしてそれを「どのようにして出力するか」でした。学生時代は作る事が好きなだけでよかったのですが、仕事ではコンスタントに成果を出していかなくてはなりません。とにかく多くの動きを見て勉強し、チェックを受けて改善し、より良いアニメーションをつくる事が一番大事でした。
3Dアニメーター兼テクニカルアーティスト時代:
アニメーターとして修業していく中で「いかにいい動きをつくるか」以外に「制作スピード」が重要という事がわかってきました。スピードがあがればある程度は自然と品質があがるものです。逆にスピードが遅いとセンスは活かしきれません。そのために自分は「制作技術」に注目しました。セーブキーをしやすくしたり、ジンバルロックの修正を1発で出来るようにしたりなど、簡単なツールをつくる事によって制作スピードを稼ぎ、品質を向上する事が一番大事になりました。
リードテクニカルアーティスト時代:
その後アニメーターの統括が役割になり、キャラクター周りのデータ設計をしながらツール作りに没頭するようになりました。また、この頃からプロジェクト運営を数年単位で考えるようになりました。そうなると、ひとつひとつのツールの出来よりも「運用」というものを大事にするようになりました。ツールの使い勝手はもちろん重要なのですが、デザイナーの要望を満たしつつ、いかにシンプルな設計でメンテナンスコストを抑え、将来的にも使っていけるツールであるかを重要視しました。また、各デザイナーのツールについての理解が不充分でも先々に問題が出ないようにしておく事も重要でした。アセット階層やデータ設計、命名規約などは将来を見越して決めておきました。完璧に未来を見据える事は不可能でも、ケアレスミスを防いだり、問題が出た時も簡単に修復できたりと、考えた甲斐は十分ありました。
リードデザイナー時代:
グラフィック全体を包括する立場に変わると「なんのためにこのアセットは必要なのか?」という事を多く考えるようになりました。以前はアセットをつくる事に夢中でしたが、今は「ゲームをつくる」という視点を一番大事にしています。ただでさえ制作工数は増えていく中で、高品質なグラフィックを大量に提供していくには、大事にするポイントを明確にしないと破綻します。どこに力をいれるか?が非常に重要なのです。
また立場があがってくると価値観の多様性を意識する事が重要になります。同じグラフィック内でもモデラーとアニメーターでは大事に思う部分は違いますし、企画やプログラマーなど職種が違う場合はさらに違いは広がります。さらに言うと、開発とお客様の間でもゲームに対する視点が違うので「なんのために?」という目的を合わせて制作していく事がとても重要になるのです。
ゲーム制作者にとって大事なもの
こうして振り返ってみるとゲーム制作者が重要視すべき事は刻々と変わっていく事がわかります。
作るゲームや立場によって求められる成果物は変わりますし、時代によって制作環境も変わってきます。その中で、ゲーム制作者にとって大事な事は1つでは無く「その時々の状況で何を求められているかを考え、答えを出し続ける」事自体が大事なのかと思います。