ゲームクリエイターは何でもできた方がいい
著者: 石原 恒和ゲームクリエイターは、ゲームデザイナーと同義と思われがちだが、ゲームを設計する者だけでなく、ゲームをプロデュースする者も、ゲームをプログラムする者も、ゲーム音楽をつくる者も、皆、ゲームクリエイターである。ビデオゲームの黎明期には、プログラムという特殊な仕事をする者が、自身のプログラム技術の範囲内で、ゲーム設計も、画像処理も、音楽や効果音も、そしてもちろんゲームプログラム自体もつくっていた。つまりは一人のクリエイターの頭の中に、つくり出すべきゲームの全てが入っていた、そんな時代もあった。シンプルなアイデアと閃きで新しいゲームを創造する、最も幸せな時代と言えるかもしれない。しかし、今の時代になっても、ゲームをクリエイトするということは、根源的には、そういうものだと私は思っている。
なのでゲームクリエイターは、まず、ゲームをつくり上げる全工程をなんらかの形で経験しているべきだと思う。ゲームの設計ができることだけではなく、絵を描けること、効果音や背景音楽がつくれること、シナリオ/ストーリーが書けること、そしてプログラムができること。もし、それらが全部できれば、どのポジションでもゲームをつくることに参加できるからである。しかも、自分が担当している領域と、その他のスタッフが担当していることの位置関係が把握できるので、全体を俯瞰して、今、自分が何をすることがゲーム開発全体にとって重要か?を判断できる。
次に、ゲームクリエイターの重要な資質は、ゲームが好きだということである。ただこれは、ゲームをプレイすることが好きだ、というだけでなく、ゲームをプレイしていて、なぜ、そのゲームは面白いのか?ゲームを分解して理解できる能力が特に大切である。ゲームを魅力的なものにしている、その骨格とディティールを論理的に理解できると、いろいろなゲームが、どういう文法で出来上がっているか?どういう共通点があり、どういう違いがあるか?を理解できるようになる。また、全く同じメカニズムのゲームで、画像だけ変えてあるとか、シナリオだけ違うとかいったものを正しく評価することもできるようになる。
さらに、ゲームクリエイターは、ビデオゲームだけではなく、その他のゲーム、例えば、ボードゲームやカードゲーム、スポーツ競技から、ごっこ遊びまで、全てのゲームといわれる領域について、守備範囲を広げておいた方がいい。特に、歴史的な盤上遊戯(囲碁、将棋、バックギャモン、チェスなど)や麻雀などのゲームは、長い歴史の中で絶妙なゲームバランスを持つように、細かなバージョンアップが繰り返されてきた、お手本である。また、つくりたいゲームが、コンピュータを使わない方が、面白いゲームになる場合も少なくない。もっと言えば、物理的/身体的な遊びと、電視的な遊びを融合させるアイデアこそが、今後のゲームクリエイティブにとって最も重要な領域になるだろうと私は考えている。
一方で、丁半博打に代表されるような、お金を基軸にしたゲーム性には注意を払う必要がある。そこにあるゲーム性は、お金に支配されており、ゲーム本来の意味とコンセプトからズレているからだ。ゲームクリエイターは、マネーゲームクリエイターとは違う。
最後に、ゲームクリエイターは、つくりたいゲームが複数あるべきである。できればいつでも10個くらいは、つくりたいゲームを持っているべきである。そして、ひとつのゲームを実現(商品化)できたら、つくりたいゲームが1つ減るのではなく、逆に2つくらい増えるべきだ。数をこなせるのがプロだ。