インターネットにおけるゲームのインパクト、あるいはその逆

インターネットとゲームの関わりは古く、単純なゲームの配信や動的なアップデート、情報の交換に始まり、MMORPGに代表されるような所謂ネットワークゲームまで、幅広く活用され、進化してきました。そしてその進化は、次々と新しいインターネットサービスが生まれるのと同様に止まることなく続き、徐々にですが「インターネットサービス」と「ネットワークゲーム」の境界は薄れていくと予想出来ます。例えばスマートフォンの登場により、ゲームがネットワークに接続されることが普通になりました。スマートフォンはゲーム専用デバイスではありませんから、同一のプラットフォームでゲーム以外のアプリケーションも動作するようになっています。必然、利用されるテクノロジーについても同様のことが起こっています。つまり、ゲームを開発する場合にも、ウェブサービスやユーティリティアプリケーションで利用されるテクノロジーやノウハウが必要になりつつあります。

こういった状況で、まだゲームがそれ以外のアプリケーションと大きく異なっている点は、開発に用いられる技術がオープンであるか否か、です。所謂ウェブサービスに用いられる技術の多くは、基本的にはオープンな方向へ向かってきました。例えばAPIの公開であったり、HTTPやペイロードのフォーマットであるJSON、認証を提供するOAuthなどの標準の公開やオープンな実装の提供です。一方でAPIを公開している、あるいは他のゲームとAPIでインタラクションを行うようなゲームはほとんど存在していません。もちろんゲームはそれぞれ固有の世界を持つことが当然で、だからこそゲームとして成り立つことがほとんどです。そのため、アプリケーション、ないしはサービスとしても閉じたシステムとなることが自然なのですが、前述のようにゲームを取り巻く環境は徐々に変化しており、そうではないゲーム、というものも徐々に増えていく可能性がありますし、こういった変化がイノベーションを産む、ということも十分に考えられます。

合わせて、より近い将来確実に進行すると予測されるのがマルチデバイスへの対応です。例えば多くのインターネットサービスでは、PC、携帯電話、スマートフォンそれぞれのブラウザやアプリケーションから同一のインスタンスへのアクセスを提供することは当然のこととなっています。同様のことは今後ゲームにおいても起こってくると考えられますし、いくつかの大きなタイトルでは一部の機能をブラウザから参照することが出来るようになってきています。例えばMMORPGのメインターゲットは、やはり据え置き型のハードウェアやPCになりますが、その一部の機能や簡易版をスマートフォンからアクセスできるようにすれば、より幅広い世界をユーザへ提供でき、より多くの時間をその世界で過ごしてもらうことが出来るようになるでしょう。

そうしてゲームのテクノロジーやシステムが、それ以外のアプリケーションやサービスのそれへ近づいていくことで、ゲームで使用されているテクノロジーやノウハウが、別のアプリケーションやサービスで活かされる機会も増えていくのは間違いありません。例えば、ユーティリティアプリケーションが3Dを活用すれば、もっとユーザに分かりやすいインターフェースを提供できるかもしれませんし、2012年現在で最も多くARのような技術を利用しているのはおそらくゲームだと思われますが、これもゲームに留まらない多くの可能性を持った技術です。

こうして考えてみると、ゲーム、そしてインターネットサービスにはまだまだ多くの可能性があり、多くのイノベーションが産まれてくるように思えてきますし、きっと産まれてくると思います。そして、ゲームとインターネットサービスの融合はその一つのヒントになるのではないでしょうか。