放送作家や脚本家として有名な小山薫堂さんは、企画力を鍛えるために「勝手にテコ入れ」と名付けている方法をお持ちだそうです。日々、目に入るあらゆるものに、勝手にテコ入れする方法を考えることを習慣化されているとか。おもしろいのは、単なる改善案だけでなくて、キャッチコピーとか売り込み方法とかまで考えることです。アイデアのレベルにとどまらないで「企画」になっているのです。

私たちも、これを見習って「勝手にテコ入れゲーム企画」を考えてみてはどうでしょうか。あなたが生活する上で困ったこと、不満に思ったことをゲームで解決できないか、そしてそのアイデアをどう商品化するか考えてみるのです。例えば、苦痛でしかない電車の通勤ラッシュや、長いラーメン店の列をゲームで楽しくできないか、などです。

この「勝手にテコ入れゲーム企画」には2つの効果があります。

1つ目の効果は、目的と制約がはっきりしている中でゲーム企画を考える訓練になるということです。通勤ラッシュの例で言うなら、目的は「通勤時間を楽しくする」ことであり、制約は「電車の中でできること」「満員の中でもできること」です。

ビデオゲームは、コンピューターの性能内であれば、ほぼ何でもできます。しかし、この自由度の高さゆえに、企画をまったくフリーに考えると案外考えがまとまらないことがあります。また、思いつきだけでとどまって、「どんな人ならこのゲームを買って貰えるだろうか」とか「どのようにアピールすれば売れるだろうか」といったところまで思い至らないこともあります。

しかし、「勝手にテコ入れゲーム企画」は「ゲームで特定の層の不満や問題を解決する」ということが明確になっている上に「どう商品化するか」という部分まで考えなければならないので、そこを見失うことがありません。明確な目的と制約、そして商品化の補助線を引くことで、目的を見失わない企画を作る訓練になるというわけです。

もう1つの効果は、ゲーム以外の視点が広がるきっかけになるということです。

新しいゲームを生み出していくためには、いろいろな知識や経験が必要です。今までビデオゲームはハードもソフトも凄い勢いで発展してきました。そのため、ゲームを作る側も、そういった発展についての知識や経験を身につけ、それを追うだけでも新しいものを生み出すことが可能でした。また、国内の他のゲームや、ゲームと親和性の高いマンガやアニメといったジャンルに注目しているだけでゲームを作ることができました。しかし、ゲームを取り巻く環境の大きな変化によって、その限界も見えてきています。

競争はグローバルになってきて、日本のゲーム界の影響力は相対的に低下しています。一方で、ソーシャルゲームやゲーミフィケーション、シリアスゲームといったまったく新しいゲームの可能性も広がってきています。

そんな時代に、従来のビデオゲームの知見だけを元にした「改善案」の企画しか生み出せないようでは、我々は生き残っていけません。そもそも、そんな企画ばかりでは企画する側も面白くないと思いませんか。

「勝手にテコ入れゲーム企画」を考えるということは、今まで気にもとめていなかった事象や切り口のゲームを考えるということです。世の中には面白いゲームのヒントがたくさん埋っています。社会の中からそういったヒントを見つけ出したり、いろんなことを体験して、それをゲームの企画にフィードバックしていけば、日本のビデオゲームはまだまだ豊かになる可能性を持っているのではないでしょうか。

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